境界性人格障害の治療法:薬物療法
境界性人格障害の治療法である薬物療法では、感情が不安定な時に薬を用います。
95%以上の患者が薬物療法を受けているという統計があります。ただし、薬で全てが解決するわけではないことを心に留めておきましょう。
薬物療法をするにあたって、以下の4点に気を付けてください。
1.医師からきちんと説明を受ける
どんな症状に対する薬なのか、起こりうる副作用などについて説明を受け、納得の上で服薬を始めましょう。
2.薬で全ては解決しない
薬を飲んでいれば、症状が全て良くなるというわけではありません。他の治療法と並行していくことが必要です。
3.処方をめぐる葛藤が起こりうる
思うような効果が得られず医師への不満を募らせたり、薬を減らされただけで「医師に見捨てられた」と感じるなど、葛藤が生じます。薬物療法への不満や希望は、率直に主治医と話し合いましょう。
4.正しく服用する
処方された薬をため込み、不安が強いときに一気飲むなどの危険なことは絶対やめましょう。そのようなことをすると、薬をもらえなくなったり、入院治療や転院をすすめられたりします。また、勝手にやめると症状が急変することがあります。定められた量を守りましょう。
境界性人格障害専用の治療薬というものはなく、症状ごとに、うつ病や統合失調症などで使われる抗うつ薬や抗精神病薬が処方されます。
実際に処方される薬は次の通りです。
- SSRI
- 抗精神薬
- その他の薬
抑うつが強いときに使われます。セロトニンなどの神経伝達物質を調整するセロトニン選択制の抑うつ薬が使用されます。
・パロキセチン(パキシル)
・フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)
・セルトラリン(ジェイゾロフト)
怒りや焦燥感を鎮める効果があります。衝動性が強くみられる場合に使われます。
・リスペリドン(リスパダール)
・クエチアピン(セロクエル)
・オランザピン(ジプレキサ)
・ペロスピロン(ルーラン)
衝動性の抑制を目的に、抗けいれん薬が使われることがありますが、抗不安薬や従来の三環系抗うつ薬は、控えることがすすめられています。
境界性人格障害で現れる抑うつ感や感情の不安定さ、衝動性の強さなどは、薬を飲むことで改善が期待されます。そのため、外来での診療や精神療法などと並行して、症状に合わせたさまざまな薬が処方され、治療に役立てられています。
薬の使用は主治医と相談しながら進めます。「薬を減らされた」「ちっとも効かない」などといった不満はため込まず、率直に医師に伝え相談しましょう。これは、自分の気持ちを言葉で表現する訓練にもなります。