境界性人格障害の治療の経過:医師に家族をコントロールしてほしいという思い
境界性人格障害の患者は、治療の中で医師に家族をコントロールしてほしいという思いを持つ人が多いですが、基本的に家族との関係は本人の問題です。
医師が家族に意見や叱責することはありません。
ただし、患者が若く虐待などがある場合はその限りではありません。
謝ってほしい、自分にうるさく言わないでほしい、見捨てないでほしい、親子関係を改善したい、など本人は家族への強い思いを持っています。
その期待通りに家族に動いてほしいのに、家族に言っても聞いてもらえなかったり、また言えなかったりします。
そこで、「自分の言うことは聞かないけれど、医師の言うことなら聞くのではないか」という思いが芽生え、何かにつけ頼りにしている医師をあてにします。
境界性人格障害の人特有の対人操作性に、医師を巻き込もうとします。
本人、親、医師、それぞれの気持ちから、互いの見解が食い違うことは少なくありません。
- 本人の考え
- 家族の考え
- 医師の考え
医師は自分の味方で、自分の思い通りに家族を動かしたいとき、自分の代わりになってくれるはず、家族も医師には一目置いているから聞くはず、と考えています。
本人が家族に文句を言ったり責めているのは医師のせい、育て方が悪いと言われるのも医師がそういうふうに原因を挙げたからと考えています。
医師を替えるしかないという結論にたどり着きます。
医師はどちらの味方ということはなく、本人と家族との関係を見ていかなくてはなりません。
ただ、実際には本人の言葉を通して家族を理解しがちなので、その感情に影響されないよう、常に注意が必要です。