境界性人格障害の原因
境界性人格障害の原因として、いくつかの説があります。
年代別に紹介します。
- 1960〜1970年代:カーンバーグの仮説「生まれ持った気質」
- 1970〜1980年代:マスターソンの仮説「育て方の影響」
- 1990年以降:最近の研究より「セロトニン系の低下」
- 1990年以降:最近の研究より「遺伝的な要因」
- 1990年以降:最近の研究より「思春期の人間関係に影響」
境界性人格障害の有名な研究者であるカーンバーグは、環境などの要因とともに器質的な要因を重視しました。
生まれながらにもっている攻撃性や衝動性の強さが人格障害に結びつきやすいと考えました。
精神療法で有名なマスターソンは母子関係に注目しました。
子供が自立的な行動をとるときは母親は自分が拒否されたと思って冷淡に扱い、子供が依存的でいれば愛情を注ぐ、このような育て方が子供の見捨てられることへの敏感さの元にあると考えました。
脳の神経生理学的な側面から、境界性人格障害の人はセロトニンという神経伝達物質を介して働く機能が低下していることがわかりました。
セロトニン系の活動が低下すると、衝動性やイライラ感、自殺の恐れなどが高まります。
境界性人格障害の発症には、遺伝的な要因が大きく影響しているとも考えられています。
ノルウェーの研究では、一卵性双生児が2人とも境界性人格障害と診断される確率は、二卵性双生児の約5倍であると報告されています。
本人の気質、遺伝的な要因や育ち方などに問題がある場合、思春期、青年期の過ごし方で発症するかしないかが左右されると考えられています。
親子関係だけでなく友人関係なども大切な要素です。
境界性人格障害は、これが原因と断定するのは難しいです。
以前は、虐待など心に大きな傷を残すできごとが原因と言われたことがありましたが、現在ではそう単純なものではないと考えられています。
いくつもの要因が重なって発症に結びつくとされています。