境界性人格障害の複雑性:ネガティブ体験に過剰反応する
境界性人格障害の人の脳はネガティブな体験に過剰反応します。
気分や感情をコントロールするのは、情動の中枢でもある扁桃体などの大脳辺縁系と、それを制御すると前頭前野だと考えられています。
扁桃体は、ポジティブな体験よりネガティブな体験に敏感に反応する特徴があります。
個人のストレス耐性は扁桃体の感受性に左右されると言われています。
幼少期に、自身の安全や愛情を脅かされた体験をしていると、ネガティブな情動はより一層引き起こされやすくなります。
これらを制御するのが、主に腹内側前頭前野です。
腹内側前頭前野は善悪や損得で考え、不利な行動を抑え、有利な行動を促す働きを持っています。
ここが何らかの要因でうまく働かなくなると、感情をうまくコントロールできなくなり、衝動的な言動を取りやすくなります。
ネガティブな体験を多くして育った人は、扁桃体が過敏反応を起こしやすいだけではなく、腹内側前頭前野の機能も低下していることが多いです。
これは扁桃体の過剰な興奮が前頭前野の発達を阻害しているためではないかと考えられています。
したがって、境界性人格障害の改善するためには、扁桃体の過剰反応を抑え、前頭前野の制御機能を高めることが重要になります。
前者には認知療法などの精神療法が、後者にはトラウマ体験に対する暴露療法や表現的治療法などが効果的だと言われています。