境界性人格障害の複雑性:カウンセリングの難しさ
境界性人格障害では、一般的なカウンセリングや精神分析が、回復に役立つどころか、しばしば症状を悪化させ逆効果に働くことがあります。
通常のカウンセリングでは、本人の話すことにひたすら耳を傾ける傾聴が基本となります。
治療者は本人の言葉をできるだけ邪魔せず、本人が自分の語りを通して自分自身を見つめ直し再統合していくことを期待しながら、解釈や共感によってそれを補助します。
しかし、境界性人格障害で上記のようなことをすると、期待とはまったく逆のことが起きやすいです。
周囲への不満や自身の苦しさをとめどなく話しても、気が少し楽になることもありますが、話すことで余計に辛くなることがあるからです。
気が楽になったといっても、その効果の持続は家に帰り着くまでといった程度にとどまることも多いです。
過去に踏み込むと、ますます話がとりとめなく広がり、さまざまな過去のネガティブな感情が噴出します。
そして、かろうじて保っていた感情のコントロールが効かなくなり、極めて不安定な状態になることもしばしばです。
こうなってしまうと、本人も治療者もどうにもできなくなり、大変なことになります。
ですので、境界性人格障害では、一般のカウンセリングや精神分析とは異なる手法でアプローチする必要があります。